天野尚 NATURE AQUARIUM展

昨年11月から東京ドームシティで開催中の「天野尚ネイチャーアクアリウム展」も残すところあと3日となり慌てて駆けつけました。ネイチャーアクアリウムは天野尚(あまのたかし)が提唱した言葉で、水草を育み水槽内に良好な生態系を再現するという考え方です。こう言ってしまうと単純ですが、彼の思想が奥深く、同時にアーティスティックなものであることを世界中のファンが知っていると思います。わたしをふくめて。


追記:好評につき、1月21日まで延長されたようです。レッツゴー!(笑)

天野尚という人は、茶道や華道や作庭に通底する侘び寂びの世界観をアクアリウムに持ち込み水景をアートにまで昇華させた、いわば「天野流」の創始者、芸術家なのだとわたしは思っている。

もちろん、水草や魚など生き物を飼育する以上は見栄えだけにとどまらず、よりよい飼育法またメンテナンス法を自身で編み出したのだし、そのために使う機能美あふれた器具の数々を発明することまでした。透明度の高い硝子やステンレスなど素材感を活かしたスタイリッシュなアクアリウム器具はその個々が芸術的であり、彼はそれらを世に問うために起業した“アクアデザインアマノ(ADA)”のカリスマ社長だった。

本社は新潟県の彼の生家のすぐそばにある。かつて鎧潟(よろいがた)と呼ばれる潟湖(せきこ)があった土地で、幼少の彼はこの水辺で遊ぶのを好んだが、やがて高度成長期に埋め立てられ面影も残されてはいない。けれど、小川と林に囲まれたコンクリート打ちっぱなしの社屋はまるで鎧潟のモニュメントのようで、その設計は建築家である彼の実兄の手によるものである。1Fのギャラリーには彼がつくったネイチャーアクアリウムの大小さまざまの水槽が所狭しと並べられ一般公開されている。それが観たくてわたしは3回そこを訪れた。

天野尚は風景写真家でもあった。失われゆく自然を細部に至るまで克明に残したいとの想いから大判フィルムを好み、「8×20」という規格外の大判フィルムを使った。これは富士フイルムが天野のためだけに製造していた代物である。

上記の写真。この稀にみる超特大カメラ“ウィズナー8×20”で、アマゾンやボルネオの熱帯雨林を彷徨い撮影するのは至難の業だったにちがいない。キャリアの始まりが競輪選手という異色の経歴をもつ彼の強靭な精神力と体力がなせるわざだろう。世界三大熱帯雨林をはじめ、屋久島、佐渡島など各地を精力的にまわって作品を発表し、2008年の洞爺湖サミット会場に彼が撮影した佐渡島の巨大杉の写真が飾られたこともある。

天野尚が亡くなって2年が経った。あの夏、ひとりの天才が早世したのだ。享年61才。その秋、わたしは熱に浮かされたように新潟の弥彦山へ向かった。天野尚が生前に準備した写真展を観るためだ。各作品に彼自身の言葉でコメントがつけられていて、なんだか不思議な気持ちがしたのをおぼえている。

幅3m×高1mくらいの作品。真ん中らへんに小さな集落があるんだけど

その部分をスマホで撮影したものがこれ。まさに超大判フィルムならではの驚異の描写力。どこを拡大してもこのように克明に写っている

前半は写真展です。館内はストロボを焚かなければ撮影可能でしたが、金曜なのにけっこう人がいて写真撮りに時間がかかりました('Д')

後半いよいよネイチャーアクアリウムの展示コーナー。まずはカルスト台地の広大な風景を思わせる作品だ。スケール感を演出するために遠近法や消失点の設定、置き石の種類や選定、数や配置、また草原を表現するのに適した水草のセレクトなど、多くの技法が凝らされている。作品は自然美を濃厚に感じさせるにも関わらず、制作過程においては細部に至るまでテクニカルに説明可能なところがおもしろい

石、流木、砂、ソイル(粒状の土)、水槽内にさまざまな素材を持ち込み、炭酸ボンベでCO2を添加して水草を育成するなど技術を深めて、それらすべてを注ぎ込んで創造する水の中の小さな生態系。うつくしい水景。世間でもっと評価されてもいいのにと思わないでもないが、なぁに世間が気づくのはずっと後のことよと自分を慰めるしかあるまい。ナンテネ

ところでわたしはといえば、何度も水草レイアウトに挑戦したけれどあまりにも理想とかけ離れたオソマツなものしかできなくて一度ならず挫折、一般的には淡水よりはるかに難しいとされる海水のしかもミドリイシ(造礁性の珊瑚)飼育に逃げて、むしろ安らぎを得たほど。高価な器具をそろえて飼育セオリーを守って電気代の高額請求に動じなければミドリイシは飼える。しかし…なんだろう、詰め将棋みたいな、ビギナーズラックがないんですよね、水草レイアウト水槽には。才気も根気も足りなかったと言わざるを得ません

天野尚が生前に構想した「ネイチャー水草ウォール」を巨大化した作品群。水中から水際の岸辺までふくむ生態系を再現したアクア・テラリウム的な試みだ。わたしも小さなテラリウムを何度かつくったがこれも難しいんだよなぁ(笑) 壁面(陸地)を常時湿らせる散水システム自体はそう複雑ではないが、水ってやつは確実に跳ねたり漏れたりすぐ蒸発するから維持管理が困難なのです

癒される(・∀・)

アメイジング( ;∀;)

ガラス製の吸・排水管、炭酸ボンベから送られる二酸化炭素を何秒に1滴の割合で添加するか目視するためのバブルカウンター、その二酸化炭素を微細な気泡にしてくれるパレングラス、どの器具も繊細かつ遊び心がある。これらの器具をきれいに維持するのは大変だけれど、それだけ時間やコストをかける価値は充分あると思う

部屋のインテリアに最適。また小さなテラリウムつくろうかなぁ(*´з`)

途中下車してウォーキングする帰り道、新宿南口で思わずパチリ

距離9.8km、歩数15,496歩も歩いたのに

酒場に吸い込まれてカロリー的に元の木阿弥

今宵も嫁がいないから独り酒(by牛太郎) ちゃんちゃん!

かにの穴

カンクローです('◇')ゞ 初めてブログを書きます。どうでもいいおっさんの独り言ですが「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」よろしく身の丈でぼちぼち、通称「かにの穴」です。蟹大好き。うまいし。