荻窪もつ吉

雑誌社に努めてたころの後輩女子(通称・K女史)から、かれこれ20年ぶりくらい!?に連絡というかショートメールをもらい、荻窪で会うことになりました。


新卒の新人として入社した当時の彼女の外観は、いかにもインテリっぽいショートボブ風の刈り上げで、、あれだ、ブルゾンちえみ級のインパクトだったと思う。ものおじせず自分の意見をズケズケ言うキャラと相まって、まさに年季の入った「女史」そのもの。入社してわずか1年半後に誰もが知る有名出版社に移籍したのも当然のことに思えた。


そんなK女史だが、あまり社交的ではない正反対の性格の同僚A君(のちにA君はわたしの直属の部下になったので非常によく知る男である)と結婚し、南青山のオシャレなビルの屋上で行なわれた華やかな披露パーティにはわたしも呼ばれてお祝いした。


とはいえ、そこは仕事を介してのコミュニケーション。彼女たち夫婦とはプライベートでの付き合いはなかった。だから連絡をもらって(わたしに何の用だろう?)と意外に思ったのが正直な気持ちで。


「50代を迎え、夫婦して世間が狭くなる一方なので…」


突然よこしたメールには、そんな言い訳が書かれてた。介護生活も早2年、わたしもそれには同感で、ひさしぶりの邂逅がたのしみだ。

K女史が予約してくれたのは荻窪で人気の「もつ吉本店」だ。


名前のとおり、もつ焼きなど美味しい料理がいろいろ。刺し身なんかもうまい。もちろん酒もよかった。生ビール、サワー、赤ワインをボトル2本。


出会ったときは20代、いまはみな50代である。むかし話を肴にしたたか酔った。お互いの近況も初めて聞く話ばかりで熱を帯びる。


彼女はよく飲みよく笑ったが、話が近況におよぶと突然、がんが再発して治療の真っ最中なのだと言った。記憶の中でショートボブの頭にはニット帽がかぶせられていた。彼女の隣に座る旦那のA君は、むかしと変わらず呑気な顔で酒をなめている。


「旦那はともだちが1人もいないから心配で。わたしが死んだら遊んでやってください」


いつもK女史にはおどろかされる。軽口なのか本気なのか。わたしは彼女の言葉を適当にいなしながらA君の表情を観察したが、よくわからなかった。それよりわたしはちゃんと彼女の話の聞き役ができただろうか。


翌日、わたしはひどい二日酔いと無力感にさいなまれた。なつかしい想い出話やショックなことやいろんなものが未消化のまま頭の中をぐるぐるまわってる。


しかし、よくよく考えてみると、どうも彼女の真の目的は「麻雀のメンツが足りないのでわたしを引き込むこと」そのことに尽きるように思われる。いろいろ話したが、わたしが望まれて、わたしにできることは、それしかない。うん、きっとそうだ。


であれば近々お誘いがかかるのを心待ちにすればよいだけではないか。

かにの穴

カンクローです('◇')ゞ 初めてブログを書きます。どうでもいいおっさんの独り言ですが「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」よろしく身の丈でぼちぼち、通称「かにの穴」です。蟹大好き。うまいし。